第2章

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 既に出来上がっているらしい両親と兄の暴言に幸恵は握った拳を震わせたが、妊娠中で酒を控えている為素面の香織が申し訳無さそうに横からとりなしてきた為、取り敢えず怒鳴りつけるのを止めた。それを見た和臣が、疲れた様な表情で幸恵を促す。 「幸恵さん……、取り敢えず中に入ろうか」 「そうね」 (心配させるかと気を配った私が馬鹿だったわ……。香織さんはちゃんと心配してくれたのに、血が繋がった親兄弟の態度がこれってどうなのよ!?) (うん、やっぱり荒川家の人間は、うちとは違った意味で豪胆な人間の集まりらしいな)  色々思うところはあったもののそれを面には出さず、幸恵と和臣は香織に促されて大人しく座卓を囲んだのだった。  家族の物言いに正直ムカついた幸恵だったが、ここへの道すがら密かに考えていた事を実行に移すべく、大人しく座って並んだ料理を食べ始めた。そして隣に座っている和臣が、父親とビールを注ぎ合いながら上機嫌に話し出した為、さり気なくビール瓶を持ち上げて声をかける。 「今年は色々お世話になったわね。さあ、遠慮しないで飲んで飲んで」  愛想良くそんな事を言いながら幸恵がビール瓶を差し出してきた為、意表を突かれたらしい和臣は、軽く驚いた顔をしてから笑顔でグラスを差し出した。 「ありがとう。幸恵さん自らお酌してくれるなんて嬉しいよ」  和臣は嬉しいそうに応じたが、それを見た正敏は胡散臭そうな表情で幸恵を見やった。  「この前和臣が来た時は、酌をするどころか生卵をかけたのにな。お前、もう酔ってるのか?」 「そんなわけ無いでしょうが! 例の事件でお世話になったし、君島さんから家に色々貰ったみたいだし、これ位当然でしょう?」  イラッとしながら幸恵が弁解したが、正敏の意見に健と信子も同調した。 「普通だったらそうだろうが、お前がお酌する所なんか初めて見たぞ。俺にしてくれた事は無いよな?」 「明日は雪かもしれないわねぇ。元朝参りに行こうと思ってたのに……」  健が多少拗ねながら、信子が眉を寄せた困り顔で言った内容に、幸恵は顔を引き攣らせた。 (ええ、そうでしょうとも! らしくないわよ。似合わないわよ。悪い!?)  そして一人開き直っている幸恵の目の前で、マイペースで飲んでいた和臣は、のんびりとした口調で周囲に愛想を振り撒いた。 「それなら今回のこれは、尚更貴重ですね。味わって飲ませて貰います」
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