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「なっ!? どっ、どうして起きてるのよ? 泥酔してるんじゃなかったの!?」
至近距離で囁かれたのに動揺しつつ、幸恵が和臣の腕を剥がそうとジタバタもがいていると、和臣は笑いを堪えながら余裕で言ってのけた。
「俺の家系は、代々酒に強い人間が多くてね」
「だって、この前は人の部屋で爆睡してたじゃない!」
「あの時は……、偶々仕事が忙しかった時期だったし、体調が本調子でないところで無理して飲んだからね。今日はばっちりだよ」
「極端過ぎるわよっ!?」
八つ当たり気味に幸恵が叫ぶと、和臣が嬉しそうに顔を綻ばせながら囁いてきた。
「……だけど、嬉しいな。幸恵さんが夜這いをかけてくれるなんて。そんな風にこっそり忍び込んで来なくても俺はいつでも大歓迎なのに、余計にそそられるじゃないか」
「夜這っ……、ちょっとそれ、とんでもない誤解だから!」
顔を赤くしたり青くしたり忙しい幸恵を満足そうに見上げながら、和臣は幸恵の身体を抱え込む様にしたまま綺麗にクルッと半回転し、布団の上に幸恵を寝かせて、自分は上から見下ろす体勢になった。そして薄暗い室内で、艶っぽく囁く。
「照れなくても良いよ。大丈夫、幸恵さんに恥はかかせないから。それじゃあ遠慮なく」
「誤解だって言ってるでしょう! 大体他人の家なんだから、ちょっとは遠慮しろーーっ!!」
そして客間に幸恵の絶叫と平手打ちの音が響き渡った。しかもその絶叫は、他の家族達の安眠をも妨げる事になってしまった。
「何だおい、どうした幸恵?」
「あら? でも客間から聞こえてきたわよね?」
「うるっせえぞ。新年早々、何騒いでんだ、幸恵」
「幸恵さん、さっき見たら部屋に居なかったし、やっぱりこっちに居るの?」
両親と兄夫婦が困惑した感じの会話を交わしながら客間に様子を見に来ると、何故か布団で仏頂面の幸恵が正座しており、少し離れた畳に転がっている和臣が、お腹を抱えて体を丸めながら必死に笑いを堪えているところだった。
「……和臣、お前何一人で腹を抱えて笑ってるんだ? 第一、幸恵。お前がどうしてここに居るんだ? 和臣に夜這いでもかけたのか?」
「そんな訳無いでしょう!?」
代表して問い掛けた正敏に幸恵が力一杯反論し、その反応でとうとう我慢できなくなった和臣は、「ぶはっ!」と噴き出して本格的に笑い出した。それを幸恵が白い目で眺める。
「いい加減笑うのを止めなさいよ!」
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