【トマト VS キュウリ】

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 スーパーを脱出した僕はひたすら走り続ける。  しかし、トマトの体は思う様に進んでくれない。 『……はあっ、はあっ……トマトでも……疲れるんだな』  海沿いの道を走って行けば、スーパーから会社までは1時間くらい。  勿論、人間の成人男性ならばだ。 『このままでは会社に着く気がしないな。道を変えよう』  この判断は間違っていた。  トマト視線の僕は道に迷ってしまったのだ。  何処にいるのか分からない。どの方角に進めばいいのか分からない。  途方に暮れるトマト。そんなトマトの背後に影が迫る。 『誰だ!』  気配を感じて振り返ると、そこにはキュウリが立っていた。  心臓があるのか分からないけど、僕の鼓動が高まっていく。  冷静に考えれば、野菜に転生した人だっているはずだ。  バトルの予感。  トマトVSキュウリ  キュウリが距離を縮めて来る。後ずさりするトマト。  そして、キュウリは僕の体を掴んだ。 『あんたはトマトなんだね。私は気づいたらキュウリになっていたよ、はっはっは! どうしたんだい? 道にでも迷ったのかい?』  驚くほどフレンドリーなキュウリだった。 『……あの、何でキュウリになったんですか?』 『だから分からんのだよ。気づいたらなってたと言ったろ? 一ヶ月前に目を覚ましたらキュウリになってたので、食べられないように旅に出たのさ』  結局、何もわからなかった。  それどころか、一ヶ月も前にキュウリへ転生しているとすれば、腐っているのではないかという新たな疑問が浮上する。  考えても仕方がないので、キュウリに海沿いへの道を教えて貰って走り出した。
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