九.空色のネックレス。

14/25
前へ
/336ページ
次へ
 家に帰ってもほたるはずっと一人だった。大人達は旅館の仕事で忙しく子供に構う時間はなかった。それでも優子さんは、努めてほたるとの時間をとっているように見えた。  ほたるはほとんど一人で夜ご飯を食べていた。ご飯はいつも冷えていて、作りおきのおかずかあまりものだった。時々優子さんが一緒に食べてくれたけど、母親と一緒に食べることは一度もない。 「ほたるちゃん、いつも寂しい思いをさせてごめんね。女将は旅館を回すので精一杯だと思うの。私ももっと仕事が出来るようになれば、女将にも時間が出来ると思うの」 「優子さんのせいじゃないよ。それにほたるは、寂しくないよ。パパやママが忙しいってことは分かっているもん。優子さんや、仲居さん達も優しいし。ほたるは大丈夫だよ」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加