十一.中学校。

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「旅館の手伝い? どうして?」 「前に優子さん言っていたでしょ。ママは忙しくて時間がないって。だからほたるも旅館を手伝えば、少しはママの役に立つかなって」 「…………うん、そうね。女将だけじゃなく、ほたるちゃんが手伝ってくれたら皆が喜ぶと思うよ」 「ホント? じゃあ、優子さんからママに話してもらえないかな? ママはほたるの話を聞いてくれないから」  僕は優子さんの目が赤いことに気づいていた。また、健気なほたるに言えないことがあるということも知っている。  ほたるが旅館を手伝ったくらいで、母親の心には何も響いてこないだろう。いまさら何も変わらない。それは石ころの僕からみても一目瞭然だ。  たぶん、その現実に気づいていないのは、ほたるだけだと思う。  
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