十一.中学校。

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  「おはようございまーす」  この時間に更衣室に行くと必ず誰かが休憩している。今日はベテラン仲居のゆかりさんがいた。 「ほたるちゃん、おはよう。毎日お手伝いして偉いわねぇ。でも、仲居と同じ更衣室でしかも作務衣に着替えるなんて、いいのかしら。ほたるちゃんは女将の娘でしょ。言ってみれば次期女将じゃない?」 「自分の部屋よりも更衣室の方が近くて便利ですから。あと、ほたるはまだ見習いなので、作務衣すらもったいないと思います」 「あらまぁ、さすがは澄ノ島の天使なだけあるわねぇ」 「やめてください、天使だなんて」  ほたるの美しさと性格の良さは大人たちの間でも有名だった。気がついたときには『澄ノ島の天使』と呼ばれるようになっていた。  
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