十三.卒業。

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 僕も、それはとても嬉しく思う。持ち主の幸せは僕の幸せだもの。でも、もし駆がまたネックレスをプレゼントしたら、僕はもうほたるの傍にいられなくなる。  たまにはつけてくれるかもしれない。でも、今みたいに毎日一緒にはいられない。  これは、僕たち物に生まれた者の宿命だ。人間の住むこの世界には沢山の物が溢れている。人は次から次へと物を作り、購入し、廃棄する。  いちいち悲しいと思っていては体が持たない。僕たちは生まれながらに、捨てられることを覚悟しなければならない。  覚悟をしていたつもりなのにな。ずっとほたるが僕をつけてくれるわけがないって。いつかきっと、彼女との別れが訪れるって。  このことが辛いと感じるのはきっと、それだけ僕が大事にされてきたからだ。そう思えること自体が、幸せなんだ。……僕はそう自分の心に言い聞かせた。
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