二.秋の始まり。

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 思わず本音をポロリ。向かいに座っている若女将はくすくす笑っている。手を口に添える笑い方はとても上品に見えた。 「大輔くんは信頼が薄いみたいね」 「えっ、いや、そんなことは! 見た目が真っ白なので、ただのご飯かもって思っただけで!……うっ」  慌てて否定したせいでご飯が喉につまり、いそいで湯呑を手にとった。 「ちょっと、大丈夫? 私が変な冗談を言ったせいね。ごめんなさいね」 「いえ、こちらこそ、いろいろとお見苦しいところを見せてしまって……」 「ふふふ、全然そんな事ないわ。……ところで、今日陽咲ちゃんを呼び出したのはこれを渡そうと思って」  若女将はそう話しながら、私に茶封筒を見せた。そこには〈八月分お給料〉と書かれている。
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