十三.卒業。

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 陽咲との短い会話を終えたほたるは、一人で家に帰ることになった。  ほたる、さっそく寂しいね。僕は一人ぼっちの彼女にそう語りかけてみる。  本当は、今日は三人で一緒に帰りたかったんじゃないのかな。もっと二人と、沢山話したかったんじゃないのかな。  ほたるはわがままを言わないから、我慢しているだけだと思う。  今日の雪は綿あめみたいな雪で積もったりはしない。降ってはすぐに溶けていく。学校の帰り道。ほたるの足跡は残らない。真っ白な息は宙に舞い上がって、すぐに消えていく。  なぜだか今日は、目に見えるもの全てが儚く見えてくるよ。 「ただいまー……」  いつものように旅館の裏口から中に入る。今日のほたるの挨拶はとても元気がなかった。誰にも届かないほどに小さかったけど、優子さんは気づいてくれたようだ。
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