十三.卒業。

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「あのさ、陽咲、これなんだけど……」 「ん? ああ、学ランのボタンね。これ、駆のボタン?」 「うん、そう。俺の第二ボタン」 「第二ボタンって、本命にあげるヤツだよね。もしかして、ほたるのためにとっておいたの?」 「…………いや、うん。やっぱ、お前はそう言うよな」 「何それ、どういう意味?」 「いや、別に。……陽咲はさ、誰かの第二ボタン欲しいと思ったことないの?」 「え? ないよ。好きな人なんていないもん」  ほたるの場所からは、二人の姿は見えない。でも、嫌なくらいに、二人の会話は一字一句はっきりと耳に入った。ほたるは静かに身体の向きを変え、Uターンして歩き出す。  雪でびっしょりと濡れた道を、早歩きで進んでいく。
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