十三.卒業。

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 駆は、ほたるには『ボタンは全部無くなった』と言っていた。でも、今の話だと、彼は一番大切なボタンは取っておいたようだ。  どうして、ほたるにはその話をしなかったのだろう。なぜ、陽咲にそのボタンを見せたのだろう。 ……ねぇ、どうして。ほたるに嘘をついたの?  ぽつぽつと、小さな雫が僕の身体に落ちてくる。すごく冷たくて、心の奥まで凍ってしまいそうだ。その雫は旅館に着くまで、ずっと流れ続けていた。 『さすがのほたるちゃんでも振られちゃうんじゃない? 駆先輩は陽咲先輩とすっごくお似合いだもん』  こんな時に、ほたるの友達が言っていた言葉が蘇る。こんなの、思い出したくない。思い出したくないのに、その声はどんどん、どんどん大きくなってくる。
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