十四.別れの日。

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 ほたるは家に帰ると、すぐに自分の部屋に引きこもった。彼女は僕をすぐに外して、ネックレススタンドにおいた。明かりをつけず、カーテンを開けないまま。  真っ暗闇の中に、僕たちは二人きりだ。  ほたるは勉強机におかれた僕を見つめていた。その瞳は涙で潤い、ウサギのように赤くなっている。 「駆くんは……どうしてあなたを私にくれたのかな。ねぇ、知っている?」  彼女は言葉を発することができない僕に話しかけていた。こんなことは、今日が初めてだ。  駆が僕を君にあげたのは、君のことが大好きだからだよ。そう伝えたくても、やっぱり僕は君に伝えることが出来ない。  今日ほど、それが歯がゆくて悔しいと思ったことはない。
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