二.秋の始まり。

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  「あ、あっと言う間に夕食の時間になってしまったわね。今日も一日よろしくね」 「はい、では私も仕事に入ります」  事務室を出て、おにぎりの代わりに茶封筒を持って再び更衣室へと移動する。ロッカーにあるリュックに封筒をしまい、ゆかりさんと晶子さんのもとへと急いだ。 「今から柳様のお部屋に料理を運ぶから手伝ってくれるかい?」 「はい!」  調理場には前菜やお刺身などが並んでいて、それらをお盆に乗せて部屋まで運ぶ。持っていく量からして、柳様は噂の〈おひとり様〉のようだ。 「一人でも持っていける量なんだけどねぇ。陽咲ちゃんも柳様を見てみたいでしょう?」 「え? まぁ……どんな方か興味はありますけど」 「若くて結構素敵なのよ。誰か思いつかないけど、芸能人に似ている気がするのよねぇ」  
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