十四.別れの日。

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 女将と板長にばれないように、足音を立てないように、その場から離れていく。再び階段を上り、彼女の部屋に戻る。  ぱたん、と扉を閉めた途端、彼女は床に座り込んでしまった。  ぽた、ぽた、と僕の頭上には雨が降り始めた。決して止まない雨の下で、僕はじっと耐えている。  こんな時でも彼女は、必死に声を押し殺している。どうして周りを気にする必要があるの? 思いっきり泣けばいいじゃない。いっそ、ほたるがこんなにも傷ついているって、皆に知ってもらえばいいのに。  彼女は、僕をネックレススタンドに置く気力も、ベッドに戻る気力すらもないようだった。そのまま床に寝転んで、泣き続けた。しばらくして泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまった。
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