十四.別れの日。

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 こんなに寒いのに、彼女は毛布すら被っていない。ねぇ、誰でもいい、彼女に毛布をかけてあげて。僕にはそれが出来ないから。  ねぇ、お願い。早くしないと、またほたるが熱を出してしまう。 ――僕の願は誰にも届かなかった。ほたるはそのまま朝まで目を覚まさなかった。体中が震えていた。いつもより早く、身体を起こした。きっと、寒くて目が覚めたのだろう。  体を起こした彼女は、おもむろにパジャマを脱ぎ始めた。そして、クローゼットの中から、クリーニングの袋に入ったままのワンピースを取り出した。  この季節には似つかわしくない、薄手の白いワンピース。どうして、こんなに薄い服を着るの? ほたる、風邪引いちゃうよ。せめてカーディガンを羽織ったらどう?  彼女はワンピースの上に何も着ようとはしなかった。
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