二.秋の始まり。

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   顔を上げると、こちらを見てにっこりと笑っている男性の姿があった。  くしゃっとしたクセのある黒髪にほど良く焼けた肌。白いシャツは襟元のボタンを外していて、そこから見える鎖骨が妙に色っぽい。色っぽいのにたれ目なところが幼く見えて、一言では言えない魅力を感じる人だと思った。  そして、ゆかりさんの言う通り、誰かに似ている気がする。すぐに思いつかないけど、どこか懐かしさを感じるのは気のせいだろうか。  初めて会ったのに、まだ顔を合わせて数分もたっていないのに、彼と同じ空間にいるだけで心が落ち着かない。  あの人が若いからだろうか。一人客が珍しいからだろうか。それとも、誰かに似ているからだろうか。  
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