十六.手がかりを求めて。

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 それはきっと、あのネックレスの記憶を見たからだろう。ほたるがどんな思いをして、あの事務室の扉を開けたのか。どれだけの悲しみを背負って、二階に続く階段を上ったのか。  全てを知ってしまった今では、この場所に立っているだけで何かがこみ上げてくる。 「……なんか、この場所にいるだけでキツイな」 「うん、私もおんなじこと思っていた」  切ない思いを胸に秘めて、私達は事務室の扉を開けた。  部屋の中では若女将が一人で、事務仕事をしていた。 「あら、二人とも。今日はもう帰るの?」 「はい、今日はいろいろとありがとうございました」 「いろいろって……私は何もしていないわよー。あれ? 駆くん、浴衣のままね。そのまま帰るの?」 「……あ。つい、着替えるのを忘れていました」
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