十六.手がかりを求めて。

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 私も、若女将に言われるまで、駆が浴衣のまま帰ろうとしていることに気づかなかった。きっと二人とも、一気にいろいろなことを知りすぎたせいで、うまく頭が働いていないのだろう。  その結果、駆はまた若女将に笑われることになってしまった。……でも、駆はなぜか嫌ではなさそうだ。 「もう今日はそのまま帰ったら? 家も近いし。浴衣はまた今度返してくれればいいわよ」 「では、お言葉に甘えてそうします。また柳さんの部屋に行くのも照れくさいし」 「そうね。じゃあ、駆くんの服はこちらで回収しておくから。また取りに着てね」 「すいません、何から何まで……」  駆は若女将に何度も頭を下げていた。彼女はおかしそうにくすくす笑っている。その笑顔はとても温かくて、優しい。  いつもよりそう感じるのはきっと、ほたるに優しくしてくれた彼女を見たからだろう。
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