223人が本棚に入れています
本棚に追加
駆は再び、若女将に向かって頭を下げた。何度もお礼をしているところを見るに、よほどこっぴどく絞られたのだろう。それにしても、回収できなかったってどういう意味なのだろう。
小さな疑問を抱きながら、柳さんの部屋に向かう。やっぱりこの時間の旅館はまったりとしていて、仲居さん達とすれ違うこともなかった。
「柳さん、おはようございます。空野と宮村です」
「どうぞ、中にお入りください」
二日連続でおしかけて迷惑じゃかったかな、と少し心配していたけど、柳さんの声は相変わらず優しくてほっとした。
そして、例外なく今日も白いシャツと着ている。
「どうぞ、座ってくださいね」
私と駆は、昨日と同じ場所に座った。柳さんの隣には、何かがぎっしりと詰まった旅行鞄が置かれている。
最初のコメントを投稿しよう!