十六.手がかりを求めて。

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 その気持ちは、分かる気がする。今は考えるよりも先に行動していたい。このまま走っていたい。そういう気分だ。 「柳さんのお母さん、この島にいるかなあ」 「さあ、ホントにわかんねーな。……そういえばさ、俺、昨日親に叱られたって話したじゃん?」 「うん」 「あれさ、浴衣の件だけじゃないんだよね。……親に、『子供を産んだけど今は育てていない人っている?』て聞いたらさ、すげー怒られてさ。『そんなひどい人がこの島にいるわけない、二度とそんなことは聞くな』って。異常なほど怒っていてさ。なんなんだろ」 「子供を産んだけど、育てていない人、か……」  駆のお母さんは『そんなひどい人はこの島にいない』って言っていたけど、私たちのすぐ傍にいた。旅館の関係者以外は誰も気づいていなかったのかな。周りの大人達が気付いていたら、何か変わっていたのだろうか。
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