十六.手がかりを求めて。

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「あはは、駆くんは面白いね。サインなんて、ないよ」 「何故ですか? 絵本作家さんなのに」 「まさか、違うよ。あれは売り物じゃないからね」  売り物じゃない、という言葉に、私は違和感を覚えた。 「あの、神主さん。売り物じゃないってことは、世の中に出回っている本じゃないってことですか?」  私は二人の会話に入って質問をした。すると、神主さんは「ない、ない」と言いながら手を左右に振っている。 「あれは、オリジナル絵本制作のサービスを利用して、贈り物として作ったものだよ。その後持ち主の元を離れて、ここに置かれていたんだ。それを小さい頃の駆くんが気に入ってくれてね。私も嬉しくって、あげることにしたんだよ」
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