十六.手がかりを求めて。

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 私は部屋から神主さんの背中を見送った。この部屋には、私以外誰もいない。 一人ぼっちになってしまった。駆は慌てて家に戻っていった。何をしに行くのか言わなかったけど、何となく分かる。  きっと、駆の持っているあの絵本が、何かの鍵を握っている。 ……それまで、私は何をしていようかな。私もいったん家に帰ろうかな、それとも、旅館で柳さんを待とうか。  これからのことを考えながら、ふと、首元にいる空色の石に触れてみた。 〈――こうやって、君に声をかけることが出来るなら。僕はどんなことだってするのに〉 「あ……」  石に触れた瞬間、彼の声が聞こえたような気がした。何年もずっと、ほたるの傍で、気持ちを伝えられずに苦しんでいた、彼の声が。
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