十七.母親。

2/22

222人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
 神社から自転車に乗って、病院へと向かった。駆にはチャットアプリで『病院に行く』と一言伝えておいた。  駆は絵本を見つけたらどこに向かおうとするのだろう。そして、柳さんは、お洗濯は終わっただろうか。  いつも病院に向かう時は、悲しい気持ちが心の大部分を占めていた。ほたるの姿を見るのが、正直辛かった。  でも、今日は違う。女将への怒りと、真実を知りたいという思いが強くて表情も硬くなる。  こんな険しい顔をしていたら、ほたるはきっとビックリすると思う。何があったの、大丈夫? って、心配をかけちゃいそう。  大丈夫、心配しないで。きっと明日にはまた、笑ってほたるのところに行くから。 ――病室の前で立ち止まり、二回ノックをしてから入室する。部屋にはほたると女将の姿があった。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加