十七.母親。

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「陽咲ちゃん、今日も来てくれたの? ありがとう」  女将は愛想よく私に話しかける。でも私は、それに笑顔で返すことが出来ない。 ……私なんかに、笑いかけるくらいなら、もっとほたるに笑いかけてほしかった。ほたるはずっと、それだけが望みだったのに。  涙が出そうになるけど、ぎゅっと歯を食いしばって我慢する。そして、女将の顔を真っ直ぐに見据えてこう言った。 「女将、話があるんですけど、屋上まで来てもらえませんか」 「……いいわよ。何かしら。なんだか怖いわ」  女将は私が普段と違う様子に気づいたのか、表情が硬い。椅子から立ち上がり、ほたるに一言「言ってくるね」と告げていたけど、そのちょっとした行動さえにも腹が立つ。
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