十七.母親。

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……この話は、今女将が置かれている環境とはかけ離れたものだ。東京で出会った人との学生結婚。二十年以上前に、新しい命を授かったこと。  これが意味すること、それは、女将は板長と結婚する前に、違う人と結婚して、子供がいたということだ。 「生まれたのはとても可愛い男の子だったわ。私は大学を中退して、ここで子供を育てることにしたの。彼は大学に行って、そのまま東京の会社に就職したわ。澄ノ島にはよく通ってくれた。彼の仕事が落ち着いたら、一緒に東京で暮らそうね、って約束もしていたの。……でも、それは叶わなかった」 「どうして、ですか?」 「それはね、私が、彼に秘密を隠していたの。その秘密がばれて……彼は私から離れて行った」
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