十七.母親。

11/22

222人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
 柳さんは少しずつ、女将に近づいていった。そして、彼はつけていたメガネを外した。 「僕のことが、分かりますか……?」  この瞬間、私の頭の中で、すべてのピースがつながったような気がした。断片的な情報がつながって、ある一つの真実が浮かび上がる。  そして、私はこの時になってようやく、柳さんが誰に似ているのかが分かった。  あまりに近くて、身近すぎて、気づかなかった。最近は目を合わせて話すこともなかったから、分からなかった。  少したれ目な瞳、くしゃっとしたくせ毛。  春陽のような、見ているだけで心が温かくなるような笑顔。優しい雰囲気、周りを和ませる空気。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加