十七.母親。

15/22

222人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
 親の世代は全員この事実を知っていたけれど、口に出すことを禁じられているそうだ。  そのため、私たち子供世代は、女将が神社の娘ということも、女将にはほたる以外に子供がいたことも知らなかった。 「女将の話は、分かりました。子供と別れて辛かったと思います。でも、俺はよく分かりません。それとほたるのことは、全く関係ないですよね」  駆の口調は責めているようだった。駆もやっぱり、女将のしてきたことが許せないのだ。 「……そうね。本当にその通りだわ。あの頃の私は本当に弱くて、ダメな母親だった。慶と離ればなれになって、毎日が本当に辛かった。もっとそばにいたかったし、いろいろしてあげたかった。 恋しくて、いつも会いたいと思っていた。でも、慶の父親はそれを許してくれなくて。そんな私を励ましてくれたのが、ほたるの父親だった。 私は少しずつ立ち直って、彼と結婚して、女将という新しい人生を手に入れた。……そして、新しい命をまた授かった時は、嬉しかったの」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加