十七.母親。

16/22

222人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
 私たち三人は、何も言わずに、ただ女将の言葉を聞いていた。女将は時折涙を拭いながら、話を続ける。 「ほたるが産まれたときは、本当に嬉しかった。天使のようだと思った。でも、彼女をこの腕に抱いた時……慶のことを思い出したの。 二人が赤ちゃんの時は、本当によく似ていてね。ほたるの顔を見る度に、慶を思いだした。私は次第に、ほたるの顔が直視できなくなっていったの。愛する息子に何も出来ない自分が許せなかった。 それなのに、私だけ幸せになっていいのかなって考えるようになったの。新しい旦那さんと子供を愛して、幸せを感じてしまったら……あの子に申し訳ないって……」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加