十七.母親。

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 女将はずっと、愛する子供を手離してしまったことへの罪悪感に苦しんでいた。自分だけ幸せになることは出来ない。そう思うようになり、ほたると向き合うことをしなくなった。  そこからはもう後戻りはできなかった。女将はもう、自分の仕事に打ち込むことでしか、自分を保つことが出来なかった。  ほたるが自分のせいで泣いていることに気づきながら。女将は娘よりも、自分の心を平常に保つことを優先していたのだ。 「本当に私は最低だった。それは自分でも分かっていた。でも、後には引けなかったの。そんな私のせいで、ほたるは自殺未遂をして……後悔したときは、本当に遅かった。 私は、ほたるをここまで追い込んでいたなんて、思っていなかった。だってあの子は、皆に愛されていたから。どこかで安心していたの。 でも……あの子は私を求めていた。私のことを、ずっと待っていた。それなのに、私は……。本当に情けないのだけど、あの子がああなって、私はやっと、あの子と向き合う決心がついたの。 それで、今は……一分でも一秒でも、ほたるの傍にいようと思っているの」
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