十九.一年後。

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 学校を出て、二年目の付き合いになる赤色の自転車に乗って道を走る。やっぱり自転車は快適だ。これから冬になると雪が積もり、自転車には乗れなくなる。  その時まで、この子といろんな場所に行きたいな。とはいっても、澄ノ島に遊ぶところなんてそう無いんだけどね。  九月に入ると、島風は少しだけ冷たくなる。火照った体を冷ましてくれるこの風を浴びるのが好き。体全体で自然を感じる。淡い水色の空、移りゆく雲。  どこまでも続くこの景色を、いつまでも美しいと感じられる。  こんな風に、キレイなものを素直にキレイだと感じられるのは、心が落ち着いているからだと思う。 ――しばらく走っていると、河原に座っている男性の姿が目に入った。
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