十九.一年後。

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「私も……私こそ! 出会ってくれて、ありがとうございます。このピン、大事にします。ずっとずっと、大事にします!」  この瞬間、私は自分の気持ちがどんどん膨らんでいくのを感じた。私はやっぱり、この人が好き。大好き。  柳さんが他の誰かを想っていたとしても、今、彼の春陽のような笑顔は私だけのものだ。  彼がもう一度島にやってきた理由の中に、私がいなくてもいい。 『出会ってくれてありがとう』という言葉に『女性として』という意味が無くてもいい。  柳さんが、今日一日を私のために使ってくれたこと。  私のために、ヘアピンを作ってくれたこと。  私と初めて出会った日のことを覚えていたこと。  それだけで私は幸せだ。今なら空も飛べるんじゃないかって思うくらい、何でもできそうだ。  
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