十九.一年後。

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 病院の駐輪場に自転車をとめて、入口へと向かう。もう病室までの行き方は体に染みついていて、案内を見なくても分かる。自然と動く足に身を任せて階段を上り、ほたるの部屋の階に到着した。  到着したときに、私は何かを感じた。ここじゃない、もっと上の階にいるような気がするって。  何の根拠もないけど私はその直感を信じて、再び階段を上った。  階段を上りきり、屋上に続く扉を開ける。鉄で出来た、少し重い扉だ。ゆっくりと押しあけると、目の前には開放的な空間が広がる。  花壇には小さな花たちが彩りを見せ、芝生の絨毯と木製のベンチが心を落ち着かせる。私はその空間を真っ直ぐに進み、一番空がよく見える場所まで移動する。 「ねぇ、こんなところにいたら、風邪引いちゃうよ」  そう話しかけると、こんな返事が返ってきた。 「陽咲ちゃんなら、私を見つけてくれるって思っていたよ」
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