十九.一年後。

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〈あの娘はまるで空から舞い降りた天使のようだ〉  澄ノ島の皆は、彼女を目にするたびに必ずそう口にした。でも私は、彼女は天使ではないと思っていた。なぜなら、彼女の背中には羽根が無かったからだ。  人並みに悩み、苦しみ、喜び、笑う、普通の女の子なのだと。  でも、今はやっぱり、彼女は天使なのだと思う。違う表現をするなら、特別な力を持って生まれた女の子だと思う。  その力は、神様と話せたり、物の記憶を辿れたり、幽霊を見ることが出来るようなものではない。本人すらそれが特別だとは気付いていないだろう。  彼女が持っている特別なもの――それは、穢れのない美しい心だ。どんな色にも染まらない、白よりも美しい色の心。そして、その心が具現化されたように美しい容姿。
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