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「……ほたる!」
つい数週間前に卒業したばかりの中学校の校舎。自分でも分からないけれど、私はほたるが中学校の屋上にいるような気がしていた。
そして、その予感は、本当に嫌な形で的中していた。
「陽咲(ひさき)ちゃん」
ほたるは、いつものように私に向かって笑顔を見せていた。
春陽のような、見ているだけで心が癒されるような笑顔。
しかし、この時はその笑顔を見ても癒されはしなかった。むしろ背筋が凍るような思いだった。
なぜなら、彼女が立っていたその場所は……屋上のフェンスを越えた先だったからだ。
もしフェンスから手を離したら、確実に彼女は地に落ちてしまう。そのような危うい場所にいても彼女の表情は日常的で、それがたまらなく異常に感じる。
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