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「ほーん。じゃあ、このだらしないおなかはアイスキャンデーのせいだな」
シャツとスカートのあいだから覗くぜい肉に手を伸ばし、ぎゅっとつまんでやった。気が緩んでいたに違いない。きゃっ、と小動物みたいな声が絵美里の口から漏れる。みるみるその顔が朱を帯びてゆく。
ま、ささやかな復讐だ。むしろ食べものの恨みが、この程度ですむのだから感謝して欲しい。
そんな兄の恩情を無視し、絵美里はどす黒いオーラをじわじわと発していた。
「お・に・い・ちゃ・ん? なにしてくれちゃってるのかなー」
幾分トーンの低い声にイヤな予感を抱く。
「ん? 罰だよ、罰。ぼくのアイスキャンデーを無断で食べた」
内心ビクビクしながら、ぼくは冷静な兄を装って答える。
「お兄ちゃん、いいこと教えたげよっか。関節技って見た目以上に痛いんだよ?」
晴れやかなスマイルが逆に怖かった。
いつのまにやら、ぼくの片腕が絵美里のやわらかな両足にがっしり挟まれている。さて、自問自答だ。ここから繰りだされる技を答えなさい。答えは、言わずもがな。
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