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「は?」
「みなさん驚かれます。ですが、本当なんです」
「じゃあ、やってみて」
「え? 展開早いですね? いいですよ。では、このさおだけをお持ち下さい。よっこいしょ」
「なにこれ? 短くね? あと、関節がいっぱいついてるじゃん」
「はい。その関節で、伸び縮みさせるんです。ちょっと、さおだけを伸ばしてみてもらっていいですか?」
「はあ。よいしょ」
ブブブブブ
「あ、ちょっと電話。……もしもし?」
『お世話になっております。実は、発売日が、1週間程、後ろに延びます』
「えっ? そうなんですか?」
『ちょっと、編集側の都合で。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。なので、納品の締切も来週まで延ばします』
「あ、はい。わかりました。宜しくお願いします」ペコリッ。ポチッ。
「……ほんとだ! 延びた。締切……」
「でしょう? 本当なんですよ」
「偶然じゃないの?」
「お疑いでしたら、もう一度、試して頂いてもよろしいですよ」
「そう。じゃあ、もう少し伸ばしてみるよ。よいしょ」
ブブブブブ
「また電話。……もしもし?」
『お世話になっております。先程は申し訳ありません。1週間と言ってしまったような。2週間延びるのが正しいです』
「や、やはりそうなんですね……」
『えっ? やはり、とは?』
「あーいや、なんでもないです。お疲れ様です」
『それでは、宜しくお願い致しますね』
「はい。宜しくお願いします」ペコリッ。ポチッ。
「……ガチだった……なにこれすげえじゃん!」
「ありがとうございます」
「これ、売って回ってるの?」
「ええ。そうなんです」
「もっと早く来てよ! 助かったよありがとう! 買うわ! 買う! いくらなの?」
「ありがとうございます。ちょっと、お高いのですが。10万円になります」
「うお。結構痛い! でも、締切調節できるなら安い安い! 買うわ」
「ありがとうございます!」
それからというもの、俺は締切に苦労しなくなった。
困ったらまた、棒を伸ばすだけでいい。
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