コトバの距離の計り方

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 噛まない事だけに注力すれば突然私が置かれたのこの状況を誤魔化せはできるかも知れないけどキャラクターが死んでしまうかも。 見学者にはシリーズ全体の構想は知らされてないけど、学生軸のストーリーで学生キャラクターが死ねば作品としてダメージが大きいはず。 だからこそ、あえて名前もないモブにもディレクションが出たのだろう。 でも、変にキャラを立て過ぎると流れを止めてしまいそう。 何かヒントが欲しいけど、メインキャストとスタッフさんは本番への準備に入っている。 マネージャーさんもバタバタしてる。 テストの時、唯一話しかけられそうな雰囲気だった三橋役の事務所の先輩も田村役の方と結構真剣に話してる。 見学者で完全な穴埋めの私は入り込めそうな隙間がありません。 こういうところで、強引にでもこじ開けて場に入るのがプロを目指す上で必要な覚悟なのかも知れないけど、私以外の場は進んでいる、覚悟を決めてどなたかに話しかけ軽く挨拶をしてアドバイスを求める、そんな定石を踏んでいる時間がない。 誰か助けて、と言えば助けてもらえるかも知れないけど、逃げたいと捉えられる可能性も……、それだけは困る。 だから、手元の本とあの一言から情報を読み取り、キャラクターを活かせる言葉にする。 今、私のできる事、それをやるしかない。  委員長本人のキャラとしては荷物を自分でも運んだり、男子に頼み事をできているから、可憐なお嬢様属性じゃなくて活発に動くタイプかな。 放課後の少しバタバタした中でも手際よくやることは進めているのだから、担ぎあげられたお調子者でもないかな。 手伝いを頼んだり、小島くんが手伝う気になるのだから、少しは疲れているのかも。 分かる範囲のストーリーの位置としてはこの後、三橋と田村が2人で下校という学生定番イベントへの分岐、各キャラクターの心が動くちゃんとしたフラグ立てはあくまで2人になってから。 相手との距離感は物理的位置と本人の状況を考える、だけだとさっきの声を出すだけで精一杯の羽波さんでも十分できていた。 それで、あのディレクション、もう一つ乗せるなら、関係性の距離感だけど、どう測ろうか……。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加