夢が消えかけるその時に

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「私、ね…。」 「うん?」 私を勇気づけるような優しい声。不思議と心が安心する。 「坂井田カンパニーの社長の一人娘…なんですよ。」 「えっ、坂井田カンパニーって、あの大企業の!?んで坂井田さんがご令嬢!?」 誰にも言ったことがない私の秘密。恐らく学校内で知っているのは、一部の先生のみ。 私の会社は、大企業というほどではないけどそこそこ名前の知れた会社。そして、創業家一族の世襲制なんていう古臭い制度が生き残っている。 「私が後継ぎだから、もう将来は決められていて…。風間くんが自分の夢を追っている姿がすごく生き生きしていて、羨ましいな、って思ったの。」 「そうなんだ…」 力の抜けた声。きっと今、風間くんは放心状態なのだろう。 理解が付いていかないのも当然だ。私は社長令嬢だ、なんて突然の非現実的なカミングアウト。
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