夢が消えかけるその時に

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「で、坂井田さんの将来の夢は?今の坂井田さんの口ぶりからしたら、本当になりたいものがあるんだろ?」 さっきまで呆然としていた風間くんの、切り替えの早さに驚く。 と同時に、この人なら何でも受け入れてくれそうだと思った。言ってもいい…のかな。 モゴモゴと躊躇いがちに口を動かした後、ボソリとその職業名を呟く。 「…漫画家。」 自分の夢を誰かに言えたのは、初めてだ。 喉の辺りが照れくささでムズムズして、深く息を吸うと、今度は「ドン引きされるんじゃないか」という微かな不安が入ってきた。 でも、風間くんは二カッと笑顔を弾けさせて、私の後ろ向きな思考を吹き飛ばす。 「いいじゃん!そういや坂井田さん、美術得意だもんな!」 ただクラスが同じだけという薄い接点なのに、私の存在を見ていてくれたんだ。 面白いだけじゃない。よく周りを見ているこの人は、きっとお笑い芸人に向いている。
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