夢が消えかけるその時に

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「ありがとう。私も風間くんのお笑い、好きだよ。数学の原口先生の声マネなんてそっくり。あのカピカピの米みたいな声、よく出せるよね。」 「ちょっ、カピカピの米って…。確かにあの先生は乾いた声してるけど、そんな例えをした人は初めてだわ。」 同じクラスの人とくだらないことで笑い合える、普通の高校生にとっては当たり前で、私にとっては当たり前じゃない時間。 ストーブから出てくる熱すぎる風にすら、幸せを感じた。 帰り道、今日あった出来事を反芻していると、自然と笑みが零れた。 結局あの後、五時間目はサボってしまった。 風間くんからは「本当に大丈夫か?」って心配されたけど、不思議とサボったことへの罪悪感はなかった。 それだけ価値のある時間だったから。夢を語り合う、夢に満ちた時間。 夕暮れ時が近づいて色味の薄くなりかけている青空を仰ぎながら、高校の3年間ですっかり見慣れた道を歩く。 世界を綺麗だと思ったのは、久しぶりだった。
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