夢が消えかけるその時に

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新作、なんて大層なものではないけれども、今ならいい作品が描けると思う。 自室にこもり意気揚々と紙とペンを机に置いたとき、ノックの音と、私を現実に引き戻す低い声がした。 「入るぞ。」 私が返事をする前に部屋に入ってきたのは、坂井田カンパニーの社長。つまり私の父親。 無意識に背筋が伸びる。 「5時間目、欠席したそうじゃないか。早退したわけでも、保健室に行ったわけでもない、と先生が仰っていた。」 わざわざ学校から家に連絡が入っていたらしい。 たった1回授業をサボっただけで先生方が心配する理由は、何となく分かる。 上流階級の家柄、学年屈指の秀才。真面目な模範生。私がその全てを満たしているから。 でも、私はそんな肩書きは望んでいない。代わりに欲しいのは、夢を追いかける自由。 風間くんと同じ位置に立ちたいんだ。
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