夢が消えかけるその時に

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二度と朝が来なければいい。そんな幼稚な願いは叶うはずもない。 「はよっす!」 「翔汰、はよー。」 今いちばん聞きたくない声。 耳を塞ぐ代わりに、机に顔を伏せた。 「坂井田さーん!」 彼の分け隔てのない明るさが、今は憎らしくすら感じる。 仕方なく顔を上げると、風間くんのキラキラとした目が昨日と同じように私を見ていた。 見ないで。お願いだから― 「な、坂井田さんが描いた漫画見せて。つーか、いっそ即興でイラスト―」 「ごめん、見せられない。もう漫画家は諦める。」 「は、何で急に…」 「やっぱり社長にならなきゃいけないみたい。もう無理だって分かっちゃったから、いいの。」 昨日の今日で夢を諦めるだなんて、何事かと心配されるだろうか。それとも幻滅されるだろうか。 でも、そもそも私と風間くんは交わるはずのない人間。別に幻滅されたって、私は…
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