45人が本棚に入れています
本棚に追加
「…本当にそれでいいの?」
「うん。社長の仕事だって別に苦じゃないし。」
淡々とした声を作る。どうか、私の本心を見透かさないでほしい。
しばらくして、風間くんがおもむろに口を開いた。
「…他人の人生にあんまり口出ししたくはないけどさ。」
その切り出し方だけで、何を言われるのか予測がつく。これから言われるであろうことに惑わされまいを、心を意識的に固く閉ざした。
「社長やりながらちょくちょく漫画を描くことはできないの?寝る前の10分とか、昼休憩の合間とか。」
できる、と言い切りたい自分を抑える。
しなくていいことだ。夢を追いかけるなんて、私には必要ない。
「な、聞いて?」
頑なに俯いている私の右手の指先に、ちょん、と風間くんの左手の指先が触れた。
最初のコメントを投稿しよう!