夢が消えかけるその時に

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「…本当にそれでいいの?」 「うん。社長の仕事だって別に苦じゃないし。」 淡々とした声を作る。どうか、私の本心を見透かさないでほしい。 しばらくして、風間くんがおもむろに口を開いた。 「…他人の人生にあんまり口出ししたくはないけどさ。」 その切り出し方だけで、何を言われるのか予測がつく。これから言われるであろうことに惑わされまいを、心を意識的に固く閉ざした。 「社長やりながらちょくちょく漫画を描くことはできないの?寝る前の10分とか、昼休憩の合間とか。」 できる、と言い切りたい自分を抑える。 しなくていいことだ。夢を追いかけるなんて、私には必要ない。 「な、聞いて?」 頑なに俯いている私の右手の指先に、ちょん、と風間くんの左手の指先が触れた。
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