夢が消えかけるその時に

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教室の後ろのドアには、通り道を塞ぐように女子たちがたむろしている。 前のドアは通れるけど、今まさに新たなネタを始めたお笑いライブの後ろを通らなければならない。 できる限り存在感を消しながら、大きく身振りをしている風間くんの後ろを通り過ぎようとした。 特に邪魔だと言われることもなく、大丈夫そうだと気を抜いた途端、私の右半身に誰かがぶつかった。 痛くはなかったけど、踏ん張れずにその場でよろめく。 「…っ。」 「悪い!大丈夫か!?」 体勢を直してから声がした方に顔を向けると、澄み切った目がこちらを見つめていた。 その目がひたむきに未来を見据え、夢を追いかけているんだ。 風間くんが凄く眩しく見えて、思わず目を細めた。 「…いいな、幸せそうで。」 それが自分の口から出た言葉だと理解するのに、数秒かかった。はっと我に返り、慌てて手で口を覆う。
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