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「アラシ、午後から撮影なのに、モーニング入れちゃって大丈夫なのか?」
出勤した嵐史に店長が心配そうに尋ねてくる。
「大丈夫です。稼げるときに~っていうの、店長の教えでしょ」
「そうなんだけどな……まあ、無理しすぎるなよ。体壊しちゃったら元も子もないからな」
「わかってますって」
いつも指名してくれる常連さんだったから、断りたくなかった。撮影は十五時過ぎだし、それほど問題ないだろう。
特異な時間に指名をしてくるお客様は、常連になる傾向があり、予約のお客様もそうだ。紳士だし、金払いもいい上客だから手離すのは惜しい。ボーイも人の子だからお客様とはいえ、少しでも慣れた人の方が気が楽なのは確かだ。
人気者の嵐史は一見チャラそうにみえるが、こういったところの義理は欠かないし、さりげないフォローをいれるのも売れっ子になった今も欠かさず続けている。結局のところ、お客様に飽きられたらおしまいなのだ。ナンバーワンとはいえ、ときどきビックリするくらいの上玉も入ってくる業界だから、いつも油断はしていられない。
半個室になっている部屋のカーテンを引くと、見慣れた男の姿があった。
「こんにちはー、宮田さん。いつもありがとうございまーす」
「聞いたよ、アラシくん。撮影入ってるんだって?」
「はい、でも午後過ぎですし、全然大丈夫ですよ」
「そっか、それならいいんだけど…………あれっ? アラシくんってペコミン好きなの?」
「あ、ばれちゃいました? でも内緒にしてくださいね。山ほどグッズもらっても、置き場所なくてかわいそうなことになっちゃうから……」
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