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平日の朝だというのに、驚くくらい混雑している弁当売り場をいくつも見て回り、あれこれ話しながら弁当を選んだ。自分が人からどんなふうに写るかなんてわからないけれど、智徳はいつもよりラフな格好で、だけど冴えないメガネは相変わらずで、後ろにズボンを掴む子供がいても違和感がなさそうな休日のサラリーマンといった感じだった。
「ふふっ……」
「どうしました?」
「ううん……なんかいいですね、こういうの……わ、大丈夫ですか?」
乾杯、とビールとお茶の缶をぶつけると、真っ赤になった智徳がむせた。
「ゴホッ……はっ、大丈夫です……」
「うつむいて飲むからですよ、はい」
タオルハンカチを差し出すと意外そうにそれをみつめた。
「ちゃんと洗ってありますから、信用ないなあ、俺」
「そうじゃないです……ゴホッ……あ、ありがとうございます」
智徳が緊張のあまりむせてしまったことはわかっていたから、どうにかして和ませたかった。
弁当をぱくついているうち、新幹線はすぐに目的地へ着いた。乗車する前よりもひんやり澄んだ空気が心地よい。
「いい天気でよかったですね」
「はい。じゃ、行きましょうか。わあ、人多いですね。年齢層も高いけど」
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