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「じゃあいきますね、はいチーズ」  満面の笑みの嵐史と、戸惑いの硬い表情のままの智徳。 「よく撮れていますね。わはっ、やっぱり山門、でかいわ」 「アラシさん、よかったんですか?」  共に写真に写ったことを心配しているのだろうか。智徳は浮かない顔をしている。通常、写真に撮られることはあっても、大抵はお互い警戒をして、一緒に写ることはない。 「全然、これ送信しますよ。いらないですか?」 「いっ、いえ……欲しいです。とても」 「のちのち脅しになんて使いませんから、安心してくださいね」 「そんなことっ、思ってません」  撮ってもらった写真を智徳のスマートフォンへ送り、再び歩き出す。じっと画面をみつめたまま動かない智徳を、少し離れた場所から呼んだ。 「智徳さん、早く!」  本堂に着いてつつがなくお参りを済ませると、境内を一通り回る。最後に随分並んで御朱印をいただいた。 「あとは……ここに来たらやっぱりお蕎麦ですかね」 「アラシさん、お好きですか?」 「うん、大好きです」  メインの通りから少し外れたところにある、落ち着いたたたずまいの店をみつけた。ランチタイムはとうに過ぎ、お茶を飲むような時間だったが暖簾は出ている。並ばずに済みそうだったので迷わずそこに決めた。  お蕎麦もさすがに美味しい。色欲に塗れた日常の仕事と、智徳と過ごす時間も穏やかな時間。ギャップに戸惑ってしまいそうなくらい、心地の良い時間だった。
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