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男はあからさまにがっかりした。ペコミンは地方のゆるキャラだが、その人気は全国区なのでこちらでもグッズを手に入れることはたやすい。
男もきっとペコミングッズを嵐史にプレゼントして、点数稼ぎをしようともくろんでいたのに違いない。だがこんな商売をしていると、この男に限らず、高価なものから、身近で安価なものまでプレゼントをくれようとするお客様は多かった。
人気のバロメーターにもなるし、気持ちも嬉しいのだが、嵐史は自分でさばききれる以上のものをもらうことに少し抵抗があった。どうせカネを落としてくれるなら、長く指名してくれるとか、自分も対価を支払える形の方がうれしい。
まだ人気もそれほどなく、一本目のビデオ作品がリリースされる前に受けたゲイ雑誌の取材でうっかりペコミンが好きだと言ってしまったのだが、それ以来言わないようにしていた。その、つい一度きりを見逃さなかったのが智徳だ。
「こどもっぽいものかもしれませんが……よかったら」
ホテルで一夜を共にした後、帰りの新幹線を降りて別れ際に、智徳から四十センチ大のペコミンのぬいぐるみをもらった。
「俺がペコミン好きだってよく知っていますね。またストーカーの賜物、ってやつですか?」
「……そうですね。すみません」
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