プロローグ

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その感情を、言葉で表すことは出来なかった。 恋なのか、それともよくある憧れの一種なのか。 ただ、彼の姿を目にした日だけは、心が舞い上がっている自分がいることに気付いていた。 でも、私には手の届かない人だと思っていた。 彼が女性と一緒にいるところは見たことがなかった。 いつも男ばかりで家に訪れては、サッカーゲームをしたり下らない話で盛り上がっている印象だった。 だけど、それでもきっと彼は兄と違ってモテるのだろうと思った。 なぜそう思ったのかはわからない。 女の勘のようなものなのだろうか。 実際兄にさり気なく聞いてみると、やはり私の直感に間違いはなかったとわかった。 兄によると、次から次へと彼の周りに女性が寄ってくるらしい。 モテるなんて言葉ではとても表現出来ないほどだと言っていた。 だから、恋愛経験のない私とは全く無縁の別世界の人だと思っていたのだ。 でも、彼と出逢って数ヶ月が過ぎた真夏のあの日。 平凡だった私の世界が、一変した。
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