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「運命って信じる?」
今度ははっきりと大きな声だった。初めて声を聞いた気がする。透き通る様な綺麗な声。
「いや、信じないけど……」
いきなりなんだ? ……ハッ! 待てよ。これって告られてる?
ならば、
「信じないけど、あるかもね。運命」
空を見上げて言い直す。俺の中ではこの角度が一番カッコいい。
「やっぱり……」
逢沢さんは口に手をかざして綺麗な瞳を見開いた。
「……あの、それで?」
再び固まった逢沢さんに今度は俺の方から話しかける。若干の期待を込めて。
逢沢さんは我に返ったように「ちょっと待って」と鞄の中から黒いノートを取り出した。
――今思えばこの瞬間、俺の無難な高校生活は終わってしまっていた。
まさかこの一冊のノートのせいで俺の無難な人生が波乱へと変わるなんて、
この時の俺は知るよしもなかった……。
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